自衛隊候補生として陸上自衛隊に入隊し、任期制の常備自衛官を目指す以外にも、年齢や最終学歴、持っている資格などに応じて自衛隊に入隊する道は複数ある。ここではバリエーション豊富な自衛隊への入隊方法を紹介したい。
受験資格や目的に合わせ入り方が複数ある自衛官
「自衛官候補生」は、在任期間が決まっている「任期制」の自衛官だ。任期制自衛官は18〜32歳までを対象に募集をしており、陸上自衛官は1年9カ月(一部技術系は2年9カ月)、海上・航空各自衛官は2年9カ月を1任期として勤務する(2任期目以降は2年ごとに更新)。
候補生として入隊し、教育訓練修了後に2等陸・海・空士として各基地・駐屯地に配属され、約6カ月後、1等陸・海・空士に昇任。さらに約1年後、陸・海・空士長に昇任する。
このほか定年まで在籍できる「非任期制」があり、非任期制は目指す道や資格などで入り方が複数ある。例えば、候補生と同じ18〜32歳までを対象に募集をしているのが「一般曹候補生」。陸・海・空各自衛隊の各部隊の中堅層として活躍する「曹」になる自衛官を養成する制度だ。
同じ非任期制の自衛官でも、部隊を指揮する幹部自衛官を目指す道もある。通常、幹部自衛官になるには、防衛大学校に入学・卒業するか、一般の大学もしくは大学院の卒業・修了程度の学力を問う幹部候補生学校の試験に合格する必要がある。海上自衛隊・航空自衛隊のパイロットになりたい人は、「航空学生」という制度もある。
ほかにも、一般の大学生と大学院生が対象の「貸費学生」という、将来の自衛隊勤務を前提に学資金が貸費される制度や、取得が難しい資格を持っている人を対象に、即戦力として採用する「技術海上幹部」、「技術航空幹部」「技術海曹」、「技術空曹」という制度もある。
それぞれの「道」には年齢や学歴・職歴など応募に必要な条件が細かくまっているので、自衛官の採用を支援している地方協力本部に問い合わせてほしい。
どう違う?何が違う?自衛官の採用コース
<任期制>
自衛官候補生:各種任務に携わる在任期間が決まっている自衛官
18〜32歳の者を対象に、陸・海・空各自衛隊で幹部や曹の指揮下で各種任務に携わる「士」を養成。試験科目は学科試験と適性検査など。自衛官候補生は入隊後に教育訓練を受け、陸上自衛官は約1年9カ月、海上・航空各自衛官は約2年9カ月を1任期として勤務する
<非任期制>
幹部候補生:指揮官として部隊を統率する自衛官
一般大学卒業もしくは大学院修了相当の筆記試験と小論文、面接試験を受ける。合格後、陸自は久留米(福岡県)、海自は江田島(広島県)、空自は奈良(奈良県)の幹部候補生学校にて約1年の教育訓練を受け、各部隊に配属される
一般曹候補生:部隊のスペシャリスト「曹」となる自衛官
18〜32歳の者を対象に、陸・海・空各自衛隊の部隊勤務を通じて幹部を補佐し、部隊の基幹隊員となる陸・海・空曹を養成。試験科目は筆記試験、適性検査、面接試験
航空学生:海自・空自のパイロットを養成する制度
高校卒(見込みを含む)で、21歳未満(海自は23歳未満)の男女に応募資格があり、試験科目は筆記試験と面接、身体検査、パイロットに必要な適性検査などを受ける
防衛大学校:将来の幹部自衛官を育成する教育機関
高校卒(見込みを含む)で21歳未満の男女に応募資格があり、陸・海・空各自衛隊の幹部自衛官となるべき者の教育訓練を行う、神奈川県横須賀市にある機関。試験科目は筆記試験、適性検査、面接など
防衛医科大学校:自衛隊の医師・看護師を育成する教育機関
高校卒(見込みを含む)で21歳未満の男女に応募資格があり、陸・海・空各自衛隊の医師・看護師となる者の教育訓練を行う、埼玉県所沢市にある機関。試験科目は筆記試験、適性検査、面接など
賃費学生:学資金の援助を受け、自衛隊に入隊
一般の大学および大学院(専門職大学院を除く)で、医学、歯学、理学、工学を専攻している学生で、卒業(修了)後、専門知識を生かして自衛隊に勤務する意志を持つ者に防衛省より学資金が貸費される。試験科目は筆記試験と面接
技術海上幹部/技術航空幹部/技術海曹/技術空曹:取得が難しい資格保持者を即戦力として採用
無線や情報処理、電気技術など海・空自の任務で必要な国家資格免許で、取得が難しく保有者が少ない免許保持者を対象にした制度。大卒以上を対象とした技術海上(航空)幹部と、20歳以上を対象とした技術海曹(空曹)がある。試験科目は筆記試験と面接
(MAMOR2022年10月号)
<文/臼井総理 撮影/村上淳>