全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう?ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。
今回はアフリカ・ジブチ自衛隊活動拠点の「タンドリー風白身魚のグリル」。インド料理でおなじみのタンドリーチキンを白身魚でアレンジした、おいしそうな焼き色とカレーの風味が食欲をそそる1品です。
ジブチ共和国・アデン湾で海賊の警戒監視を行う自衛隊
アフリカ大陸東部に位置するジブチ共和国は、1977年にフランスから独立した、人口100万人弱の小さな国。毎日ほぼ快晴で、50度を上回る日もあり、世界一暑い国といわれています。
ジブチと隣国ソマリアに接するアデン湾。日本商船を含む多くの船舶が通航する重要な海上交通路ですが、2007年ごろから海賊による被害が多発したため、欧米・アジア諸国は軍艦などを派遣し、民間の船を海賊から守る「海賊対処活動」を展開しました。
自衛隊もこれに参加し、11年にはジブチ国際空港の敷地内に派遣部隊の活動拠点を開設。現在は、P−3C哨戒機によって海賊の警戒監視および対処を行う、海上自衛隊の「派遣海賊対処行動航空隊」と、これを支援する海自と陸上自衛隊の統合部隊「派遣海賊対処行動支援隊」の隊員らが滞在しています。
淡水魚“ナイルパーチ”を使った「タンドリー風白身魚のグリル」
酷暑の地で日々健闘する隊員のための食堂では冷たいそばやうどん、丼ものなどの日本食が中心ですが、今回紹介する料理は「タンドリー風白身魚のグリル」です。
タンドリーといえばチキン。カレー粉+ヨーグルトをメインにしたスパイシーなソースに鶏肉を漬け込み、タンドールと呼ばれる円筒形の土窯で焼いたインド料理ですが、ここでは現地で調達する食材の1つ、淡水魚のナイルパーチを用います。
手作りのタンドリー風ソースはヨーグルトをマヨネーズに変え、さらにしょうゆを加えたオリジナル。日本で作るならスズキのほか、タラやカジキがお勧めだそうです。
50度を超える暑さだからこそ、スパイスが効く!
こちらの魚料理は独特な臭みがありますが、カレー味のタンドリー風にすると、全く気にならず、おいしく食べられます(3曹/男性・20代)
隊員食堂ではバラエティーに富んだ料理が食べられますが、中でもおしゃれ感があって好きなのがこのタンドリー風です(3佐/女性・30代)
50度を超える暑さの中では刺激的な味を食べたくなります。そんなとき、カレースパイスの効いたタンドリー風は最高!(2曹/男性・40代)
「日本から離れて任務にあたる隊員たちの士気高揚につながれば」
【海上自衛隊 派遣海賊対処行動支援隊 業務隊 3等海曹 乃一礼樹】
乗員約120人の護衛艦『とね』補給科より、派遣を命ぜられ、約4カ月がたちました(取材時)。日本とは気候も食材も異なり、最初は戸惑いましたが、やるしかない!と。調理師免許を持っているので、その知識を生かしながら、給食監督官として安全で良質な食事の提供を心がけています。
また、日本から遠く離れて任務に就く隊員たちの士気高揚につながればと、毎食が楽しくなるような献立の提案にも携わっています。新しいことに挑戦することが大好きなので、今はおいしい笑顔を想像しながら、スイーツの開発に取り組んでいます。
タンドリー風白身魚のグリルのレシピを紹介!
<材料>(2人分)
白身魚(スズキなど・切り身):2切れ
塩、コショウ:各少々
【タンドリー風ソース】
カレー粉、マヨネーズ:各大さじ1+1/2
おろしニンニク、おろしショウガ:各小さじ2/3
しょうゆ:小さじ1/2
【付け合わせ】
オクラ(ゆでて1㎝幅に切る):適量
ミニトマト(ヘタを取り、半分に切る):適量
ベビーリーフ:適量
<作り方>
1:タンドリー風ソースを作る。全ての材料をよく混ぜ合わせる。
2:白身魚は水気をふき、塩、コショウをふる。バットに並べ、(1)を全体にヘラなどで塗りつける。できれば前日夜にここまで作り、ラップをして冷蔵庫で保存しておくと味がより浸透する。ラップをする代わりに、保存用ポリ袋に(1)と白身魚を入れ、身がくずれないようにもみ、全体になじませてそのまま冷蔵庫で保存してもよい。
3:フライパンにくっつかないようにフライパン用アルミ箔を敷き、(2)をのせる。中火で5分ほど焼き、焼き色がついたらひっくり返す。さらに3~4分焼いて、焼き色をつける。フライパン用アルミ箔がない場合はサラダ油適量(分量外)をひいて焼く。
4:器に(3)をのせ、付け合わせを彩りよく添える。
注目料理:ナイルパーチ
アフリカのナイル川を原産とするスズキ目アカメ科の淡水魚。アフリカ大陸の河川や汽水湖(多少の塩分を含む湖沼)に生息しており、体長2メートル、体重200キログラムにまで成長するものもある。
タンパク質が豊富で、ジブチ活動拠点では重要な食用魚。独特の臭みはあるが、下処理や味付けの工夫により魚本来のうま味を引き出し、活用している。日本にも輸入され、スズキ(ナイルパーチ)として販売されている。
(MAMOR2022年10月号)
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/山川修一(扶桑社) 写真提供/防衛省>