明日の国防を語るときに、欠かせないのは隊員家族の協力。任務は最前線が多く、長期間、家を空けることもある海自の特異な任務の完遂は家族の支えがあって初めて成り立つもの。日本の平和を未来につないでいる家族、中でも「妻」の“任務”の一端をのぞいてみた。
艦艇乗りの妻に聞く悲喜こもごもの家庭話
隊員家族の日常生活には、ささいなものから大きなものまで、さまざまな苦労が付いてくる。反面、国防という誇り高き任務に就く自衛官を夫とする喜びを感じる家族も多いようだ。そこで、海上自衛官でも、特に長期航海で長く家族のもとを離れることがある潜水艦・護衛艦乗りの妻たちに、その両方について話を伺った。
隊員と共に国を守る海自家族あるある図鑑「困った編」
ケンカも強制終了
出勤しても毎日帰ってくるサラリーマンとは違い、1度出港すると何日後に帰ってくるかも分からない艦艇乗り(守秘義務で家族にも言えない)。何があるか分からない第一線での任務だけに、家を出るときが今生の別れになる可能性も。なので、前の晩に夫婦げんかをしてわだかまりが残っていても、朝、玄関で見送るときには笑顔を心掛けるようにしているとか。
気持ちが大事なの!
出港しても、寄港地はだいたい同じ。初めこそお土産を買ってきてくれはしたものの、出港を重ねると、同じ土産になって飽きてくるので、今では「いらないよね」と先に言われるように。「家族にお土産を買ってあげよう」という気持ちがうれしいのに……。
海上自衛官の体って!?
長期の海上勤務で「曜日感覚」が失われないよう、艦艇で金曜日にカレーを食べる習慣は今や有名な話ですが、「金曜=カレー」が身に染み付いて、在宅時にカレー以外の料理を出すと、文句を言われるのはちょっとめんどくさいとか。
いろんな意味で台風コワイ
台風が接近すると、「台風避泊」といって、港に停泊している艦が暴風や波浪によって岸壁にぶつかって傷つかないよう洋上に避難させるため、艦艇乗りには、すぐに艦から招集がかかります。その後は数日出航で不在となり、台風による被害におびえ、一番家にいてほしい人がいなくなるのは本当に不安らしい。
家に帰ると子供が……
家でも海自ルール健在
海自の幹部候補生学校では、定刻の5分前には準備を終え、定刻と同時に作業が始められる状態にしようとする「5分前の精神」を徹底的に教え込まれます。それは海自家庭にも持ち込まれることがあり、時間どおりに行動していても「遅い!」と怒鳴られるのは、迷惑でしかないそう。
切ない子どものひと言
子どもが小さいうちは、たびたび長期出航に出るお父さんの顔を忘れてしまうことも。やっと会えると楽しみに帰宅した父を無邪気なひと言で凍り付かせるのは、海自あるある中のあるある、なのです。
さすがはサラブレッド!
街中で自衛官の姿を見かけると、自然と敬礼をしてしまうわが子。しかも脇を45度に締めた完璧な海自式。周囲の人がドン引きしているのには苦笑い、とのことです。
艦乗りの合言葉!?
艦艇は緊急に出港することもあるため、たとえ連休などでも旅行などの予定を入れられないそう。わずかな期待を込めて「今度の休日の予定は?」と聞くと、ほぼ毎回「未定」と言われるので、今や合言葉のよう?
船酔いならぬ陸酔い
長く艦上で生活すると、艦を降りた後しばらくは「陸(おか)酔い」するそうで、せっかく帰宅しても、すぐには使い物にならないのだとか。
どちらへお帰り?
艦艇乗りは「艦が家」という意識が強く、自宅から出勤するときに「艦に帰るね」と悪気もなく言われると、「じゃあ、ここは仮の住まい?愛人宅?」と突っ込みたくもなるそう。この不用意なひと言で険悪な空気になる海自家庭も多いとか!?
夢を壊さないで!!
「海の男」だけに、訓練や海外派遣で世界各地に行っているため、海外旅行経験の乏しい私が夢を語っても、そっけない返事しか返ってこず、ガッカリするらしい。
【たいらさおり】
海上自衛隊をこよなく愛する漫画家。著書に、海外自衛官の夫との日常生活を描いた
『海自オタがうっかり「中の人」と結婚した件。』(秀和システム)シリーズがあり、2021年12月に第5弾「海自オタ魂は永遠に!!」編を出版し、完結した
(MAMOR2022年4月号)
<マンガ/たいらさおり>