日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。今回は沖永良部島分屯基地の「えらぶそば」を紹介します。地元特産品を使ったオリジナリティーあふれるメニューは見た目もボリュームも、もちろん味も満点です。
南西エリアの平和に欠かせない。沖永良部島分屯基地
沖永良部島は奄美群島の南西部に位置し、鹿児島県大島郡に属します。東京都伊豆大島よりも若干大きく、飛行機で鹿児島から約1時間30分、沖縄から1時間ほど。周辺にはサンゴ礁が広がり、通年、鮮やかな花が咲きます。
その島の西側にある大山(標高246メートル)の尾根沿いにあるのが、航空自衛隊沖永良部島分屯基地。敷地内の真ん中に町道が通っているため、観光客でも通行可能な「外柵がない基地」としても有名です。空自那覇基地の分屯基地で、1972年、沖縄本土復帰とともに第55警戒群として編成され、開庁50周年を迎えます。
南西航空警戒管制団に属する第55警戒隊の所属部隊は、総括班、監視小隊、通信電子小隊および基地業務小隊。主な任務は、24時間365日、平時、有事を問わず警戒監視を行い、南西エリアの平和を守り続けることです。
分屯基地でしか味わえない!「えらぶそば」とは
今回紹介する「えらぶそば」は数年前、ここでしか味わえない独創的なレシピを作ろうと、給養員同士で話し合い、「鶏飯」と「沖縄そば」から着想を得て誕生したもの。鶏飯は奄美地方の郷土料理で、ほぐした鶏肉、錦糸卵、パパイヤのみそ漬けなどをご飯にのせ、鶏ガラスープをかけたもの。
沖縄そばは甘辛く味付けした豚の角煮(ラフテー)がのったそばです。島桑(注目食材参照)が練り込まれた薄緑色のそば、生キクラゲや、タラ、トビウオなどを原材料にした特産品の島カマボコなど、島の食材がふんだんに使われています。だしはコクがありながらも、あっさりとした優しい味わいです。
ラフテーとえらぶそばが相性抜群
「豚肉がよく煮込まれていてやわらか。ラフテーの甘辛い味がえらぶそばとも相性抜群で、箸が止まらなくなります」(士長/男性・30代)
「えらぶそばの香りと味はクセがなく食べやすいです。栄養素も豊富に含まれているので、体が元気になる気がします!」(1曹/男性・40代)
「えらぶそばのきれいなグリーンが食欲をそそります。パパイヤ漬けのシャキシャキ食感もアクセントになって良いですね」(2曹/男性・30代)
台風が近づいたら大慌て!
【航空自衛隊沖永良部島分屯基地 第55警戒隊基地業務小隊厚生班給養係 栄養士 徳 麻美】
沖永良部島で生まれ育ち、沖縄で2年間栄養士として働き、2000年に故郷に戻って入隊しました。穏やかな風土でのんびりとした島ですが、物資は船で運ばれてくるので台風が近づくと大変!そんなときも、備えと知恵と工夫を最大限に発揮し、温かい食事がとれるよう心掛けています。
約90人の隊員が利用していて、若い世代からは島にはお店がないハンバーガーのリクエストもあります。フライドポテトも付けてって(笑)。毎回の食事を飽きずに楽しんでもらいたいので、バラエティー豊かな献立作成に挑戦する日々です。
「えらぶそば」のメニューを紹介
<材料(2人分)>
そば(乾・あればえらぶそば):260g
[ラフテー(作りやすい分量)]
豚バラ肉(塊):300g
酒(あれば泡盛):1/2カップ
砂糖(あれば黒糖):50g
しょうゆ:1/3カップ
[キクラゲ佃煮]
生キクラゲ(千切り):40g
ショウガ(千切り・好みで):1かけ
<A>
しょうゆ、みりん:各大さじ11/2
酒:大さじ1
砂糖:少々
サラダ油:少々
白ゴマ:適量
[そばだし]
水、豚肉のゆで汁:各2カップ
<B>
鶏ガラ顆粒スープの素:小さじ2
和風顆粒だしの素、しょうゆ、酒:各小さじ1
塩:小さじ1/2
[トッピング]
カマボコ(あれば島カマボコ・食べやすく切る)、錦糸卵(市販品)、パパイヤ漬け(市販品・千切り)、万能ネギ(小口切り)、紅ショウガ:各適量
<作り方>
1:ラフテーを作る。豚肉は水3カップ(分量外)で30分ほど煮、ゆで汁2カップ分をそばだし用に取り置き、残りのゆで汁は捨てる。もう1度ひたひたの水(分量外)で30分ほど煮てゆで汁は捨てる。豚肉を8等分にして鍋に戻し入れ、調味料を加えて強火にかけ、アルコール分を飛ばしたら弱火にし、30分ほどコトコト煮る。
2:キクラゲ佃煮を作る。鍋にサラダ油を熱し、キクラゲ、ショウガをさっと炒め、Ⓐを入れてさらに炒め、味がなじんできたら白ゴマを加えてひと混ぜする。
3:そばだしを作る。鍋に水と①で取り置いた豚肉のゆで汁を入れ、Ⓑを加えて煮立たせる。
4:そばはたっぷりの湯で表示どおりにゆで、湯をきる。
5:器に④を入れ、①、②と、トッピングを彩りよくのせ、③を注ぎ入れる。
注目食材:えらぶそば
奄美群島から台湾にかけて分布する、亜熱帯性の桑の木「島桑」。沖永良部島でも古くから自生しており、葉を摘んで乾燥させ、クワ茶として飲む習慣があったそう。その島桑の葉の粉末を小麦粉と練り合わせ、乾麺に仕上げたのが「えらぶそば」。食べるとほのかにクワの風味を感じる。
奄美の太陽と赤土で育つ島桑は海のミネラルを吸収し、食物繊維、カルシウム、鉄分、カリウムなど天然の栄養素が豊富に含まれている。
<調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/林紘輝(扶桑社) 写真提供/防衛省>