•  2022年は、海自にとって70周年のメモリアルイヤー。しかも今年は、今までになかった新しいタイプの護衛艦「FFM」の就役をはじめ、新たな装備が次々とお目見えするのだ。

     こうした新装備は、一朝一夕には生まれない。5年前、10年前、場合によってはもっと以前から計画が練られてきたものもある。防衛省、海上自衛隊がどのような「未来予想図」をもとに装備を作ってきたのか、最新の動向も交えてお伝えする。

    飛行性能が向上!23年度配属の新型哨戒ヘリ・XSH-60L

    画像: 飛行性能が向上!23年度配属の新型哨戒ヘリ・XSH-60L

    【XSH-60L】
    <SPEC>全幅:16.4m 全長:19.8m(寸法はローター回転時) 全高:5.4m

    高温環境でも安定して運用できるよう飛行性能が向上したXSH-60L

     海上自衛隊の哨戒ヘリコプターは、海中に潜む敵潜水艦を捜索し攻撃する、日本の防衛には不可欠な装備だ。新型哨戒ヘリXSH-60L(注)の開発に関しては、従来機のSH-60Kでは要求していなかった、より厳しい環境下において任務遂行を可能とする要望を盛り込んだ。

     その結果、高温環境下で空気の密度が薄くなるとエンジン出力が低下するために、従来機ではホバリング(ヘリコプターが空中で静止した飛行状態にあること)できないような環境においても、ホバリングが可能になるといった飛行性能の向上が図られた。
     
     加えて、安全性の向上と搭乗員の負担軽減のため、自動操縦装置の改良も行った。さらにソナーをはじめとする各種センサー類、情報処理能力の強化・向上を図り、潜水艦の捜索能力をアップさせている。
      
     XSH-60Lは21年5月12日に初飛行し、同年9月には防衛装備庁に2機の試験機が納入された。各種飛行試験を繰り返し、23年度にはSH-60Lとして正式に部隊に配備される予定だ。

    注:防衛装備庁で開発中の次期装備については、装備品名の前に「X」を付けて表す

    世界トップレベルの潜航能力!海自の新型潜水艦

    画像1: 世界トップレベルの潜航能力!海自の新型潜水艦

    【たいげい】

    2022年3月就役した『たいげい』。漢字では「大鯨」と書く。本艦の就役により、海上自衛隊が長らく目標としてきた「潜水艦22隻体制」が完成する。
    <SPEC>基準排水量:3000t 全幅:9.1m 全長:84m 深さ:10.4m

    画像2: 世界トップレベルの潜航能力!海自の新型潜水艦

    【はくげい】

    2021年10月に命名され、進水したばかりの『はくげい』。漢字では「白鯨」と表記し、白いマッコウクジラを意味する。
    <SPEC>基準排水量:3000t 全幅:9.1m 全長:84m 深さ:10.4m

    リチウムイオン蓄電池に合わせた設計で潜水性能が向上

     2017年から建造が始まった新型潜水艦『たいげい』型は、原子力を使わない通常動力潜水艦としては世界トップレベルの潜航能力を持つ。鉛蓄電池と比べて、より多くの電力を素早く充電、放電できる上、水素ガスも発生しないリチウムイオン蓄電池の特性を最大限に発揮できるよう、設計を改めた点が大きなポイントだ。

     潜水艦は、ディーゼルエンジンで発電・充電した電気でモーターを動かしプロペラを回して推進する。潜航しながら充電するためには、スノーケルと呼ばれる吸排気装置を海面から突き出し、外気を取り入れながらディーゼルエンジンを回して航行する必要があるが、『たいげい』型の4番艦からは、潜航しながら速やかに蓄電池を充電できる「新型スノーケル発電システム」を採用。これにより、これまで以上に効率的に潜水艦の充電ができるようになる。

     1番艦の『たいげい』は22年3月に完成・就役、2番艦の『はくげい』は23年3月に完成予定。現時点では、古くなった艦の代替として6番艦までの建造が計画されている。

    (MAMOR2022年4月号)

    <文/臼井総理 写真提供/防衛省>

    これからの新・海上自衛隊

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