•  日本全国にある自衛隊の基地・駐屯地の隊員食堂で自衛官たちはどんな料理を食べているのでしょう? ぜひ味わっていただこうとレシピを取り寄せました。今回のメニューは北海道函館基地隊の「函館塩ラーメン がごめ昆布入り」。料理名のとおり、ご当地ラーメンの塩ラーメンに、函館特産の“がごめ昆布”がたっぷり入った、あっさり味の海鮮風です。

    ※隊員食堂で作られているレシピをもとに編集部で家庭向けにアレンジしました。

    津軽海峡を護る。海上自衛隊函館基地隊

    画像: 観光の中心地に位置する函館基地隊本部庁舎。門前に夜景で有名な函館山がそびえ、夏は「港まつり花火大会」の特等席として庁舎裏が一般開放される

    観光の中心地に位置する函館基地隊本部庁舎。門前に夜景で有名な函館山がそびえ、夏は「港まつり花火大会」の特等席として庁舎裏が一般開放される

     海上自衛隊函館基地隊は北海道函館市西部地区、かつて旧函館税関庁舎があった場所にあり、敷地内には1876年、明治天皇が北海道初上陸の際に使用された石造りの桟橋や石畳が残っています。徒歩数分の距離には明治の文明開化の歴史が感じられる観光名所「旧函館区公会堂」、「金森赤レンガ倉庫」などがあります。

     1952年8月に保安庁警備隊函館航路啓開隊として発足。翌年9月には保安庁警備隊大湊地方隊が発足し、その隷下で警備隊函館基地隊となり、54年7月、海上自衛隊の発足にともない、現名称に改称。本部、松前警備所、竜飛警備所、第45掃海隊で編成されています。任務は津軽海峡周辺海域の防衛警備、不発弾など爆発性危険物の処理や浮流機雷の処分、道南の港に寄港する艦艇や修理艦艇に対する後方支援、災害発生時の救助活動などです。

    海の幸をふんだんにつかった絶品ラーメン

    画像: 海の幸をふんだんにつかった絶品ラーメン

     基地隊がある北海道の3大ラーメンといえば、「札幌のみそ、旭川のしょうゆ、函館の塩」といわれています。今回紹介するメニューはもちろんご当地ラーメンの塩味に地元特産品のがごめ昆布(注目食材欄参照)、ふのり(海藻類の一種)、ベビーホタテなどをトッピングしたもの。ラーメンに欠かせないチャーシューには鶏ムネ肉を使ってあくまでもヘルシー。それぞれの素材からだしがしみ出て、スープはコクがあるのにあっさりとして優しい味わいです。

     がごめ昆布をスープに溶くと、特有の粘りとうまみが加わり、食感も変わって、何度も「おいしい!」とつぶやいてしまうのだそう。

    うまみたっぷりで箸が止まらない!

    画像: 小規模な隊員食堂だが清潔感があり、少数部隊独特のアットホームな雰囲気が漂う。地方の味を出すため、栄養士と給養員が協力し、限られた予算内で工夫を凝らしている

    小規模な隊員食堂だが清潔感があり、少数部隊独特のアットホームな雰囲気が漂う。地方の味を出すため、栄養士と給養員が協力し、限られた予算内で工夫を凝らしている

    「みそラーメン好きなのですが、このがごめ昆布入りの塩ラーメンは特別で、あっさりしながらも満足のできる1杯です!」【2曹/男性・40代】

    「あっさり塩ラーメンの中に、栄養たっぷりのがごめ昆布のうまみがしっかり感じられ、箸が止まらなくなります」【3曹/男性・20代】

    「がごめ昆布のシャキシャキ食感と、粘りが絡んだつるつるしこしこの麺の食感が心地よく、最後までおいしく食べられます。」【技官/女性・50代】

    故郷の味を思い出せる味付けに

    【海上自衛隊函館基地隊 補給科 調理員 2等海曹 佐藤光貴】

     出身は札幌です。入隊は1991年で当隊に着任して3年目になります。制限の多い護衛艦で調理していた経験もあるので、陸での勤務は楽しいです。全部で32席の小規模な食堂なので、コミュニケーションもとりやすく、何より生の声を聞くことができるのがうれしいですね。

     出身地がさまざまな隊員に故郷の味を思い出してもらえるよう、全国各地の郷土料理を作ったり、飽きのこない味付けにも工夫を凝らしています。基地の外に出れば飲食店も多いですが、“やっぱり隊員食堂がいいね!”と言われるようにしていきたいです。

    「函館塩ラーメン がごめ昆布入り」のレシピを紹介

    <材料(2人分)>

    中華麺:2玉

    [スープ]
    水:5カップ
    だし昆布:1枚(約5g)

    【A】
    塩ラーメンスープの素(市販品):大さじ2
    顆粒鶏ガラスープの素:小さじ1

    塩:少々

    [トッピング]
    ベビーホタテ:6個
    鶏ムネ肉:1/2枚
    顆粒鶏ガラスープの素、塩、コショウ:各少々
    がごめ昆布(乾物・刻み)、ふのり(乾物):各4g
    メンマ(市販品)、白髪ネギ:各適量

    <作り方>

    1:スープを作る。鍋に水とだし昆布を入れて火にかけ、沸騰直前でだし昆布を取り出す。Ⓐを入れ、味見をして塩で味を調える。

    2:ベビーホタテは、①のスープ少量で3〜4分煮て、軽く下味を付ける。スープは①に戻す。

    3:鶏肉は顆粒鶏ガラスープの素、塩、コショウをもみ込み、密閉ポリ袋に入れる。鍋に湯(分量外)を沸かし、密閉ポリ袋を入れ、鶏肉の表面が白くなったら火を止め、フタをして余熱で蒸らす。冷めたら中心部まできちんと火が通っていることを確認し、食べやすくスライスする。

    4:がごめ昆布とふのりは、それぞれ水適量(分量外)に漬け、戻す。

    5:別の鍋にたっぷりの湯(分量外)を沸かし、中華麺を表示どおりにゆで、湯をきって温めた器に入れる。

    6:⑤に①のスープを熱くして注ぎ入れ、②、③、④とメンマ、白髪ネギのトッピングを彩りよく盛り付ける。

    注目食材:がごめ昆布

    画像: 注目食材:がごめ昆布

     正式名称は「がごめ」。名前の由来は表面が凸凹で「かごの目」のようなところからとされる。昆布の一種で、日本では道南域、特に函館沿岸の限られた地域でしか採れな希少なもの。水で戻してそのまま使える刻み昆布は混ぜご飯や酢の物などにも。最大の特徴は粘りの強さ。その主成分であるフコイダンは、ほかの昆布の2倍以上含まれ、血糖値の上昇、高血圧、高コレステロールを抑制するなど、優れた健康食品とされる。

    ※オンラインショップなどでも購入可能

    <調理/樋口秀子 文/富田純子 料理撮影/林紘輝(扶桑社) 写真提供/防衛省>

    (MAMOR2021年12月号)

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