•  陸上自衛隊の駐屯地にある隊員食堂では、地元食材を使用した「陸自飯」を提供中。全国に約160種類あるメニューの中から「陸自飯選定委員会」が、郷土愛あふれる逸品を選出した。

    陸自飯選定委員会とは…本特集のため、陸上自衛隊の給食に造詣が深い、本誌編集部、ライター、カメラマン、フードジャーナリストなどで編成された委員会

    久里浜駐屯地:久里浜オムライスランチ

    三崎のマグロと横浜のナポリタンをセットにした、地元愛溢れるメニュー

    画像: 三崎のマグロと横浜のナポリタンをセットにした、地元愛溢れるメニュー
    画像: 陸上自衛隊通信学校や中央野外通信群などが所在している久里浜駐屯地

    陸上自衛隊通信学校や中央野外通信群などが所在している久里浜駐屯地

     久里浜駐屯地(神奈川県)の「久里浜オムライスランチ」は、麦を加えてパラリと仕上げたチキンライスを使ったオムライスに副菜が付くセットメニューで、郷土愛の真骨頂は副菜にある。

     それは、大量のマグロが水揚げされることで有名な三崎港が駐屯地から近いことに由来したマグロのカツと、駐屯地がある神奈川県の県庁所在地・横浜にある、1927年創業の老舗ホテル『ホテルニューグランド』が発祥といわれるナポリタンが、付け合わせのサラダと共に盛り合わせられている。ペリー上陸の地らしいハイカラな洋食セットだ。

    Access:JR「久里浜駅」または京急「京急久里浜駅」下車徒歩約15分。それぞれの駅よりバスで約3〜8分。「自衛隊前」下車

    伊丹駐屯地:伊丹飯

    地元の“魂”をダブル盛り!カロリーモリモリの活力源

    画像: 地元の“魂”をダブル盛り!カロリーモリモリの活力源

     伊丹駐屯地(兵庫県)の「伊丹飯」は、戦後の食糧難だったころ、兵庫県で生まれた2つのソウルフードを合わせた1品。

    中部方面総監部や第36普通科連隊などの部隊が所在している伊丹駐屯地

     兵庫県加古川で生まれた「かつめし」は、洋平皿に盛ったごはんの上にビフカツを乗せ、デミグラス・ベースのソースをかけたものだが、隊員食堂では、タルタルソースや激辛ソースなども選べるので味が変えられるとのこと。さらに、この「かつめし」に、神戸市長田区界隈が発祥の、牛すじとコンニャクを甘辛く煮込んだ料理「ぼっかけ」を加えた一皿が「伊丹飯」だ。

     ソウルがダブルでのった郷土愛いっぱいのメニューだ。

    Access:JR「北伊丹駅」から徒歩約20分。JR「伊丹駅」よりバスで約15分。「総監部前」下車

    久居駐屯地:33鷹の油麺

    名物・伊勢うどんのたれと部隊名を取り入れ、陸自らしさと郷土愛あふれるメニュー

    画像: 名物・伊勢うどんのたれと部隊名を取り入れ、陸自らしさと郷土愛あふれるメニュー
    画像: 第33普通科連隊などが所在する久居駐屯地

    第33普通科連隊などが所在する久居駐屯地

     久居駐屯地(三重県)の地元の名物である「伊勢うどん」は麺をゆでるのに約1時間掛かるため、時間に制約のある隊員食堂では提供できない。そこで、ゆでた中華麺に少なめの濃いスープを絡めて食べる油そばをベースに考案した一皿。

    タカをあしらった第33普通科連隊の部隊マーク

     スープには、伊勢うどんのたれを隠し味に使い、トッピングに伊勢志摩産のアオサの天ぷらをのせて郷土愛を演出。さらに同駐屯地に所属する第33普通科連隊の「33」と、その部隊マークにあしらわれているタカをメニュー名にして陸自らしさをアピールした。

    Access:近鉄「久居駅」で下車。東口から徒歩約5分

    板妻駐屯地:清水もつカレー

    地元愛4種の盛り合わせで、食べた隊員が元気になる

    画像: 地元愛4種の盛り合わせで、食べた隊員が元気になる

     板妻駐屯地(静岡県)の定食メニューは、地元愛の盛り合わせだ。大皿には、焼津漁港で水揚げされたマグロを使った「焼津まぐろキャベツメンチ」、ブランド野菜“三島馬鈴薯”を使った「みしまコロッケ」、静岡県の郷土食「黒はんぺん」のフライと、揚げ物3種が。

    画像: 第34普通科連隊や第3陸曹教育隊などが所在する板妻駐屯地

    第34普通科連隊や第3陸曹教育隊などが所在する板妻駐屯地

     そして、料理写真左上のおわんの中で主役を張るのが、アニメの『ちびまる子ちゃん』でおなじみ旧清水市民のソウルフード、モツの土手煮をカレー味でアレンジした「もつカレー」だ。そのままでも、ごはんにかけても箸が止まらない。これを食べると「また頑張ろうって元気になれるのよね」。

    Access:JR「御殿場駅」からバスで約15分。「板妻」下車

    奄美駐屯地:奄美産 鯛の塩焼きとマダ汁

    陸自飯の中でも群を抜く上品さ。奄美大島の新鮮な魚をぜいたくに食べる

    画像: 陸自飯の中でも群を抜く上品さ。奄美大島の新鮮な魚をぜいたくに食べる

     奄美駐屯地(鹿児島県)の陸自飯は、地元で水揚げされたタイの塩焼きと郷土料理「マダ汁」だ。塩焼きに使うタイは新鮮で、海に囲まれた島ならではの一品。

    奄美警備隊などが所在する奄美駐屯地。建物は周囲の景観を損なわないよう緑色になっている

     マダ汁は地元で親しまれているイカスミ入りみそ汁のことで、黒い汁のインパクトは抜群。まさに地産地消、地元の魚介類を使ったメニューの好例だ。マダ汁には、パスタ料理などに使うペースト状のイカスミを用いるなど、素早く大量に作る陸自飯らしい工夫もグッド。

    Access:「鹿児島港」からフェリーで約11時間。「名瀬港」で下船し、「港町待合所前」よりバスで約20分。「自衛隊奄美駐屯地前」下車

    陸自飯ってどんなメニュー?

     陸自飯は、駐屯する地域の地元食材を使った、隊員の体作りに必要な栄養満点の郷土愛あふれるメニュー。2021年2月にはホームページからの投票で1位を決める「陸自飯グランプリ」を開催。今回紹介した5品のほか、約160ある陸自飯のレシピはホームページ(https://www.mod.go.jp/gsdf/fan/rikujimeshi/recipe.html)で公開されている。

    自衛隊もしも行けたらツアー・ガイドブック

    <文/臼井総理>

    (MAMOR2021年12月号)

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