行きたいときに、行きたい所へ、自由に旅をすることがしにくい時代です。そこで、マモルでは、仮想旅行のガイドブックを用意しました。もしも、の旅先は、一般人にはなかなか行けない場所。まさに“秘境中の秘境”です。乗り物はあなたの想像力、さあ出発です!
砕氷艦『しらせ』で行く “南極”
はじめに、地球で最も南に位置する“南極”を紹介します。南極には国立極地研究所が設置した気象や地質などの観測を行うための基地があり、海上自衛隊がその観測支援をしています。仮想ツアーでその行程を一緒に体験してみよう!
このツアーのキーワード
・氷を割って南極へ
・オーロラ観測
・南極生活体験
南極ってどんなところ?
南極は地表の約98パーセントが氷に覆われた大陸(氷の厚みは平均2500メートル)で、広さは約1300万平方キロメートル。南極条約により、どこの国にも属さないと定められている。気温は夏でも平均約マイナス1度、冬は平均約マイナス20度と寒く、降水量も非常に少ない
オレンジ色の艦艇『しらせ』で南極へ!
砕氷艦『しらせ』は、海上自衛隊が運用する艦艇だ。文部科学省国立極地研究所の観測隊員や物資の輸送、同研究所が管轄する昭和基地の設営支援などを任務としている。護衛艦とは異なるオレンジ色の船体は、雪と氷で一面真っ白になる南極で目立つ色として決められたもの。
『しらせ』は毎年11月ごろ観測支援用の物資を乗せて日本を出発。直前まで日本で準備を行い、航空機で移動してきた観測隊員を途中のオーストラリアで乗せ、南半球の夏となる年末ごろ南極・昭和基地に到着。2月に前年度南極で越冬をした観測隊員を乗せて昭和基地を離れ、オーストラリアを経由して日本に戻る。『しらせ』の南極圏滞在は約90日。総行程約150日間の航海だ。
砕氷艦『しらせ』
『しらせ』は、国立極地研究所の南極観測に必要な機材、食料そのほかの物資を輸送するために建造された艦艇。海上自衛隊が運用するため、識別の艦番号も付与されている。なお『しらせ『の名が付く砕氷艦は本艦が2代目。
<SPEC>基準排水量:12650t 全幅:28m 全長:138m 速力:約35km/h 深さ:15.9m 喫水:9.2m
南極ツアーの見どころをご紹介!
ダイナミックに氷を割って前進
厚さ約1.5メートルまでの氷なら船の推進力で砕いて進める『しらせ』。それ以上厚い氷は、艦を後退させ、氷に体当たりしながら乗り上げ、艦の重さで氷を砕く“ラミング”で進む。
美しすぎるオーロラの夜
南極で見られるオーロラはとても美しい自然現象。『しらせ』艦上からは、全天に広がるオーロラを見られることも。ちなみに、肉眼で見ると白っぽく見えることも多い。
沈まない太陽、南極の白夜
夏季、南緯66.33度を越え南極圏に入ると、写真のような、太陽が1日沈まない「白夜」が見られる。初めて見たときは、夜に太陽が見られることに違和感を覚えてしまうかも。
『しらせ』艦内での生活とは?
もしも『しらせ』に乗って南極に行くとしたら、艦内でどんな生活を送るのか紹介しよう。長期間の航海でも快適に過ごせるよう、艦内スペースは広めに作られており、居室は2人で1室を使う。食堂や医務室も充実。理髪室は、理容師が乗艦しているわけではなく、隊員同士で切り合うための設備になっている。
食堂
海自隊員と観測隊員が食事や会議などで利用している。
医務室
医務室には自衛官の医師、歯科医師が常駐し、対応している。
居室
居室には2段ベッド、2人分の机とロッカー、簡易ソファーがある。
理髪室
理髪室は乗員同士で散髪をするので失敗してしまうこともあるとか。
昭和基地での生活とは?
昭和基地に滞在する観測隊員は、およそ1年半程度南極で生活する。管理棟は3階建てで、個室は4畳半。食堂やバーなどもある。ゲーム大会など月に1回は何らかのイベントが行われ、観測隊員たちも楽しみにしているという
写真提供:空中氷園(Twitter:@sansyo17)
昭和基地・管理棟
居住スペース
居室は2人で1室を使用する。
BAR:南極
観測隊員が接客係を務めるバーも常設。
餅つき
お正月にはみんなで餅つき大会を開催!
露天風呂
氷点下環境で入る露天風呂は最高!?
卓球大会
基地の外で開催された卓球大会。
そり滑り大会
氷上を滑る速さを観測隊員同士で競う。
第1夏期宿舎
自衛官も滞在場所として利用する宿舎。
南極で成人式を挙げることも!
南極滞在期間である1月の第2月曜日は日本では「成人の日」。20歳を迎えた隊員がいれば、南極で成人式を行うこともある。これは一生の記念になるかも!?
<文/臼井総理>
(MAMOR2021年12月号)