自衛隊にはさまざまなフォルムを持った特殊な装備品がたくさんある。その掃除方法はやはり特殊なのだろうか?戦車や航空機、護衛艦など、「これはどうやって洗うんだろう?」と疑問に思った装備品の掃除法を調べてみた。
地対空誘導弾ペトリオットの掃除:定期点検に合わせて水洗いで掃除する
地上から航空機を撃墜するため、防衛態勢を整えている地対空誘導弾ペトリオットシステム。
掃除は、定期点検に合わせて行う。高圧洗浄機で洗いながらアウトリガー(装置が揺れないように固定する補助脚)など可動部に不具合がないか確認しながら掃除する。
けん引車(航空機用)の掃除:小石1つ残さぬよう細かく掃除する
戦闘機や輸送機を運搬するけん引車は、水洗いなどで掃除をする。その際、車体に不具合がないか確認しながら掃除をするが、航空機の故障や事故の原因となる異物を滑走路や駐機場に持ち込まないために、特にタイヤに小石などの異物が挟まっていないか、入念に確認をする。
94式水際地雷敷設装置の掃除:付着した海水によるさびつきを防止する
海岸沿いなどに対舟艇用の地雷・障害などを設置する94式水際地雷敷設装置。
高圧洗浄機で汚れやさび防止のため塩分を含んだ海水を落とした後、可動部など細かい部分に潤滑油スプレーやシリコングリースを塗布する。海水のかかる可動部は不具合が起きやすく、念入りに掃除を行う。こびりついた塩分は簡単に落ちないのだ。
水上航行時は浮体(フロート)を車体左右に展開するが、掃除はフロートを開けた状態と、たたんで荷台に乗せた状態の両方で行う。
水陸両用車AAV7の清掃:腐食を防ぐため、車両洗浄装置を使い塩分を洗い落とす
水上を航行できる装甲車である水陸両用車AAV7は、海上航行を行った場合は毎分200リットルの水を噴射できる洗浄装置で洗車し、車体に付いた塩分を洗う。
地上走行後は、履帯にこびりついた泥などを落とすが、その際は戦車部隊も使用する「泥落とし」で掃除する。洗浄時は車体の底部などにゴミがたまると排水機能が低下するため、丁寧に洗う。
海の上空を飛ぶ航空機の掃除:塩害から機体を守るウオッシュラック
海の上空を低空で飛ぶ航空機は、塩分を含んだ風にさらされる。機体に付着した塩分はさびの原因になり劣化を進めてしまうため海上自衛隊の航空基地には「ウオッシュラック」という機体を丸ごとシャワーで洗い流す装置がある。
滑走路脇にスペースがあり、ここに機体を止めると、下から大量の水が噴き上げ、一気に機体を洗浄してくれる。ウオッシュラックによる洗浄は、海の上空を低空で飛ぶ航空機は、着陸後に行うことを基本としている。
ヘリコプターの掃除:機内の掃除は、高圧空気でほこりを吹き飛ばす
飛行機の点検や整備の際には、機外に付着した汚れを布などを使用し丁寧に除去。機内掃除はエアダスターなどでほこりを吹き飛ばし、小型の掃除機やブラシでゴミを除去する。エアダスターは機体の前方側から後方に向かって吹きつけ、上方側から下方に向かって掃除する。直接視認できない部分は、鏡などを使って念入りに行う。
掃除は、単にきれいにするだけではなく、機体の異常を事前に発見したり、飛行中の視界を確保し、安全な飛行を行うため、非常に重要な作業だ。
滑走路の掃除はいつどのように行う?
航空基地の滑走路や誘導路上に小石などがあり、それが万が一航空機のエンジンに吸い込まれてしまうと、故障や事故につながってしまう。そのため、隊員は訓練の始まる前の早朝などに滑走路や駐機場の点検と掃除を定期的に行う。FOD(Foreign Object Damage)清掃と呼ばれるこの作業は、地味だが飛行安全に直結する重要な掃除だ。
(MAMOR2020年12月号)
<文/臼井総理>