自衛隊の新入隊員教育では掃除を教える。隊員はどんなことを学ぶのか。それを知るために、きれい好きを自認する俳優の西川俊介さんに、陸上自衛隊武山駐屯地で“自衛隊式掃除法”を体験してもらった。
「掃除して天晴れ! ソウジニンジャー!」
【にしかわしゅんすけ】
1994年生まれ。2013年「第26回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」準グランプリ受賞。ドラマ『GTO』で俳優デビュー。15年『手裏剣戦隊ニンニンジャー』伊賀崎天晴/アカニンジャー役で主演。『戦国炒飯TV』(TOKYO MXなど)、『闇芝居(生)』(テレビ東京系)に出演
自衛隊の教育とは?
教育隊は、入隊した自衛官などに対する基礎教育を実施する部隊。取材で訪れた第117教育大隊は東部方面混成団隷下の教育部隊で、新入隊員は駐屯地内の隊舎で規則正しい集団生活をおくりながら、教育期間中に、掃除、アイロンかけ、ベッドメイキングなどの部隊での日常生活に必要な事項を学ぶ。
掃除の基本は「上から下へ」
お世話になる教官にあいさつ
陸上自衛隊武山駐屯地に到着。掃除の指導をしてくれる教官・助教の出迎えを受けた西川さん。まずは元気にあいさつするところからスタートだ。
廊下の清掃
掃除の基本は「上から下へ」行う。廊下に設置された帽子掛けなど、高い所にあってほこりがたまりそうな場所を拭いた後、床の掃き掃除へと進む。
窓の清掃
助教の松村雄司3等陸曹から、「窓の桟のほこりも忘れずに」、「サッシなど細かい部分は使い古しの歯ブラシでこすってかき出す」と掃除方法のアドバイス。
自衛隊が掃除を通じて教えるもの
居室の清掃
ベッド下は普段は収納してある荷物をベッドの上に全て上げ、床に何もない状態にしてから掃除する。ほうきを使い部屋の壁側、奥から出入り口に向けて掃く。
戸棚の扉の隅など、見落としそうな部分を教官は見逃さずチェック。掃除という日々の作業を通じて「細部への気配り」を教えていくのだという。
見落としがちなのが、いすの「脚」。自然とたまってしまうキャスターの汚れにも注意。もちろんいすが置かれていた部分の床も忘れずに拭くように指導を受ける。
階段の清掃
階段の隅にほこりがたまりやすいのはもちろん、垂直面にも靴跡、靴墨が付くのできちんと掃除。落ちにくい汚れは水をつけたメラミンスポンジでこする。
玄関の清掃
室内に泥や砂ぼこりを持ち込まないための砂利を落とす防じんマット(金属製の網)の下も定期的に清掃。清掃時は網を持ち上げて、中にたまった砂を集めて掃きとる。
玄関マットは棒などでたたいて砂ぼこりを落とす。自衛官は訓練などで泥まみれ砂まみれになることが多く、マットにたまる砂も相当な量に。落とした砂が舞うので風向きにも注意。
角の掃除を怠るな!
洗面場の清掃
鏡は固く絞ったキレイな雑巾で拭いた後、鏡の角などに拭きムラが残らないように空拭きをする。
洗面台はブラシでボウル部などの汚れを取り、蛇口など金属部分はメラミンスポンジで磨く。ピカピカになったら水気を拭き取る。掃除後に水滴が残っていたら教官に指摘されるぞ。
床面は掃き掃除でほこりを取り除いたあと、水拭きモップを使って隅々まで掃除。力を入れて、洗面場の奥から入り口に向かって拭く。
トイレの清掃
トイレも上から順に。個室ドアの上部など天井に面した所に注意して拭く。また、便器のふたや便座の「裏」も汚れが残りがちなのでチェック。
「掃除に対する考えが変わりました。ありがとうございました!」
(MAMOR2020年12月号)
<文/臼井総理 写真/増元幸司 ヘアメイク/徳田智美>