自衛隊は働く場としても魅力的と聞きますが、実際どうなのか、若い自衛官に、所属する部隊の自慢やら、任務のやりがいやら聞いてみたいのですが、編集部が質問しても、お堅い話しか返ってきません。そこで、若者に人気の漫才コンビNON STYLEの2人に出馬を要請。リモートな世の中だから、直接会わずに軟らか〜くチャットでインタビュー。
【NON STYLE】
石田明（写真左）と井上裕介の漫才コンビ。2000年5月14日結成。爆笑オンエアバトル第9代目チャンピオン。08年M-1グランプリ王者。自衛隊とコラボした「ジェイTube」で自衛隊PR大使も務めた
NON STYLEがリモートで本音を探る
今回のチャットでインタビューは、入隊前に航空自衛隊の広報イベントである航空祭に関わったことがあるという藤塚桃子空士長。実はNON STYLEも自衛隊のPRを務めたことがあり、「広報」という言葉に反応した2人は、この話を切り口に取材を開始するようです。でもその前に、藤塚士長の所属する「航空自衛隊中部航空警戒管制団基地業務群通信隊」を紹介しましょう。
【藤塚桃子空士長】
2017年航空自衛隊入隊。地上無線整備員として入間基地に勤務。学生時代はミス航空祭として入間基地のイベントに参加した経験を持つ
航空自衛隊中部航空警戒管制団 基地業務群通信隊とは
航空自衛隊入間基地に所在する基地通信の管理業務を担う部隊
部隊が所在する入間基地正門。人員のみならず面積でも最大規模を誇る空自の基地だ
南東北・関東・中部・近畿地域領空と、その周辺地域の防空を担当する中部航空警戒管制団に所属する部隊。航空警戒管制団は担当区域の領空や周辺空域をレーダーで監視し、わが国の領空を侵犯する恐れのある航空機や領空侵犯した外国の航空機に対して緊急発進した戦闘機の誘導を地上から行う。
基地内の通信設備は定期的に整備を行い、確実に通信できるよう環境を整えている
その隷下にある基地業務群は入間基地の管理業務を担当し、その中でも通信隊は無線や有線による基地内外との通信、電話や各システムを構成するネットワーク器材の維持管理、 基地内放送設備の維持管理などを行っている。災害が発生した際には、衛星通信装置を短時間で設定する緊急回線接続なども担当する。
入間基地内で衛星通信回線の接続試験を行う藤塚士長。電話やネットワークは「つながって当たり前」だからこそ、細心の注意を払って点検する
基地業務群通信隊は、基地内外の通信に関わる任務全般を担当。航空自衛隊への理解と広報の目的で基地を一般開放する航空祭や、基地内で行われる式典などの行事の際に音響や映像配信も担当する。
「ミス航空祭」選出がきっかけで自衛官に
藤塚桃子空士長（以下、藤塚）：航空自衛隊、地上無線整備員の藤塚桃子空士長です。よろしくお願いします。
井上：よろしくお願いします。入隊前に自衛隊に関わったことがあるんだって？
藤塚：大学時代に入間基地の航空祭に「ミス航空祭」として参加しまして、これが入隊のきっかけにもなりました。このとき初めて航空自衛隊の存在を意識しました。
石田：写真めちゃくちゃ盛れてるじゃないですか。
藤塚：盛ってますね（笑）。空への強い憧れと誇り高い仕事に魅力を感じ、そこで出会った自衛官の「誰かがやらなければならない」という言葉に感銘を受け入隊を決意しました。
石田：俺40年生きてきて「誇り高い」って言ったことないもん。
井上：トレーニングとかも大変でしょ？
藤塚：訓練で男性と一緒のときは体格に差があるので大変ですね。でも、私は体育会系で空手やソフトテニスをやっていたので運動は得意な方です。
石田：ソフトテニスから先に言ったほうが空手の力強さが出るよ。
井上：どっちでもええわ、そんなの。今はどんな任務に就いてるんですか？
藤塚：無線や有線による他基地との通信や、基地内放送設備の維持管理、基地内の電話やネットワーク器材の維持管理などです。
「入間航空祭」の通信関係を担当するのも自慢です。航空自衛隊を身近に感じてもらうために1963（昭和38）年から行われている歴史あるイベントで、30万人くらい来場する空自最大規模の航空祭なんですよ。
ブルーインパルスが入間基地を使用する際も無線器材整備などを担当します。
パイロットの命を背負う通信隊
井上：すごいなぁ。通信って1番セキュリティーちゃんとしないとダメなところですよね。
藤塚：そうですね、無線の周波数なども細かく決まっているので注意が必要です。
石田：大変やん、それ。ハッキングされちゃったら情報が漏れちゃう。
井上：われわれの仕事はミスしても傷つくのは自分だけじゃないですか。でも皆さんの仕事はミスしたらダメですよね。
藤塚：例えばパイロットと通信できない危険な状況になるかもしれません。命に関わりますし、プレッシャーはありますね。
井上：飛行機墜落する系の映画とか観ますか？
藤塚：それは観ます（笑）。観るたびに「気をつけよう」と思いますね。
石田：そんなふうに見るんや。
藤塚：通信ってつながって当たり前じゃないですか。地味なイメージですけど、つながることで自衛隊の作戦が遂行できますし、通信は防空の要であって誇り高い職種です。
基地イベントではこんな感じでお客様を誘導します。
石田：僕も入間基地で記念撮影できますか？ 無線機持って写真撮ることが可能でしょうか？
藤塚：ぜひお越しください！
石田：いいんですか！ 行かせてもらって。
井上：現場の方がええって言ってる。藤塚さんの部隊は女性隊員は結構いるんですか？
藤塚：10人くらいですかね。多いと思います。
ノンスタイル石田：10人でグループチャットしたり。
藤塚：……ないですね。
石田：ないんかい！
井上：通信使え、通信。
石田：使え！使え！
目標は〇〇になること
井上：藤塚さん、恋はどうなんですか、恋は？
藤塚：私、結婚してまして。旧姓は髙田です。
井上：お相手も自衛官？
藤塚：はい。入隊前からお付き合いしていて、落ち着いてから結婚しました。今は北海道と埼玉県で遠距離です。でも、今日たまたま臨時勤務で埼玉に来ているんです。
藤塚夫：こんにちは。
石田：ダンナ〜。幸せそうやな。遠距離だとあまり会えないですね。
井上：早く一緒に住みたいよね。将来お子さんが生まれたとして、自衛隊の仕事は辞める？
藤塚：私は続けたいです。今は育児の制度も整っていて、入間基地には保育施設もあるんです。子どもを預けて3分で職場に行けます。
井上：子どもが陸海空の自衛隊で、陸自にはまってしまったら悲しくないですか？
藤塚：そこは何としても「パイロットになる」と言わせるのが目標です。
石田：名前も「空」を入れたりするんでしょうね。
藤塚：実家の愛犬は「くぅ」っていうんです。今度買う車のナンバーも「900」にします。
石田：3×3は？
藤塚：……9？
井上：無理やり言わせんなや。藤塚さんの今後の目標は何ですか？
藤塚：今の仕事も好きですが、空への憧れもあって輸送機の貨物室の責任者である「空中輸送員」が最終目標です。同じ女性の「空中輸送員」である伊藤摩由3等空曹の写真を送ります。
井上：空中輸送員になるのは大変なの？
藤塚：語学力や身体能力など試験でいろいろ見られるので高い壁があります。
井上：女性の空中輸送員はどれくらいいるの？
藤塚：3人ですね。
石田：そんだけしかいないんや。厳しい道やね。
藤塚：そうなんです。夫婦生活も始まるけど、私には夢がある。夫も応援してくれる。でも子どもも産みたいし、家も建てたいし。どうしたらいいんだろう？
井上：日本はまだ大変な時期が続きますが、自衛隊の見えない努力が絶対に日本をよくしてくれます。大変ですが頑張ってください！いつか対面で会えることを願ってます。
藤塚：はい、ありがとうございます。入間基地にもぜひ来てください！
NON STYLEが入間航空祭で漫才を!?
井上：入間航空祭は盛り上がりそうやね。
藤塚：もうすごいです！ ぜひ来てください！私も音響担当としてBGMを選曲します。30万人が聞くと思うと誇らしいです！
石田：30万人の前でライブしたいな〜。
井上：オレの魅力、伝わっちゃうな。
石田：通信隊の皆さんコイツの通信切ってください！
井上：切らんといて〜
＜撮影／増元幸司（NON STYLE）、防衛省（部隊提供、藤塚士長本人）＞
（MAMOR2020年9月号）
