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     自衛隊で行う、あらゆる教育や訓練がスキルに結び付く。これは教育隊に限らず、部隊に配属されてからも変わらない。元陸将補であり、現在は執筆業や危機管理コンサルタントとしても活動する二見龍氏に、自衛官が身に付けるスキルについて伺った。

    時間の管理を覚えながら話上手・段取り上手になる

    二見龍氏

     自衛隊に入隊すると、学生は集団生活の中で「素早く適切に対応する」ための訓練を受けると二見氏は話す。

    「最初は“1分”が持つ重みを認識していなかった学生も、時間に追われる生活を送るうちに、1分あればいろいろできると理解します。戦闘訓練時、無線を使った伝達では、10秒話し続けたら敵に傍受されてしまう。大砲による砲撃は秒単位の正確さで弾着します。作戦行動において、時間を守れない行動は命の危機につながるのです。そのため『5分前の精神』で、全ての行動を設定時間から逆算し、段取りを組む習慣がつきます。事前準備を行うことで精神的な余裕も生まれます」

    画像1: 時間の管理を覚えながら話上手・段取り上手になる

     上官へ報告する「伝達」も、無駄を削ぎ落とし、必要なことだけを明瞭に、誤解がないように伝えることが日常なので、話し方や声の大きさなどのスキルが自然と磨かれていると二見氏は考える。

     自衛隊の訓練の多くは、チームで行われる。定められた時間の中で、全員が同じレベルで業務を完遂することが大きな目的だ。

    画像2: 時間の管理を覚えながら話上手・段取り上手になる

    「自衛官は『自分はチームにどんな貢献ができるのか』と体力面や知識など自分のことを分析し、客観的に理解する力が身に付きます。これが『自己認識力』です。そして隊員同士が互いに得意・不得意なことをカバーしつつ行動するうち、絆が生まれます。1人ひとりが『仲間のために』と考えることで、より高い能力を体得できるのです。結果的にチーム全体、組織として、強さの底上げにつながります」と二見氏。
     
     自己認識力は、危機管理能力の向上にも関係する。「訓練中のけがや失敗の多くは、人為的ミスによって発生します。そしてその原因が、自分の能力を『過信』したせいであることも多いのです」。

    “個”への観察力が組織を強く育てるきっかけに

     二見氏は、自衛隊のチーム作りがスキルが身に付く要素であると考えている。

    「上官は常に隊員1人ひとりの精神状態や体調に気を配っています。リーダーは“個”に対する関心が高くなければ、強いチームは作れないからです。そして各隊員は、チーム全体を1番に考えることで広い視点を持てるようになります。反対に『自分1人がよければいい』と身勝手に考える人間は、結果的に視野が狭くなりがちです。また、自衛官は『空気を読む能力』に長けているといわれますが、これも“個”に対する関心が高く、広い視点を身に付けているからこそ周りのちょっとした変化にも目が向くのでしょう。そしてこのスキルは『危険を察知する能力』と密接につながるのではないでしょうか」と二見氏。戦闘や緊急事態を想定して行う自衛隊の訓練は、人間力を向上させる土壌にもなっているのだ。

    人間力が身につく4つの訓練

    画像: 人間力が身につく4つの訓練

    自己分析能力が身に付く訓練

     体力向上に関わる訓練は、現時点での自身の限界を知るきっかけになる。記録を伸ばすために、どんな練習をすべきか考えるようになる。

    伝達力が身に付く訓練

     訓練開始時や終了時の報告など、部隊全体に連絡をする機会も多い。全員に正しく理解させるため、伝え方や話し方を工夫するようになる。

    協調性が身に付く訓練

     任務は基本、2人以上のチームで動くことが多い。相手の動きを常に気に掛けることでお互いの考えや動き方が分かるようになる。

    計画実行力が身に付く訓練

     訓練や演習の計画が天候などの変化で変わることもある。その際に最適な計画を立てられるか、柔軟な発想力や実行力などが養われる。

    元自衛官は、社会人として基本スキルが備わっているから評価が高い

    岡田真実氏

     自衛隊経験者が民間企業へ就職する際、なぜ高い評価を得られるのか。キャリアアドバイザーとして自衛隊の就職支援を行う株式会社パソナの岡田真実さんに話を聞いた。

    「元自衛官を雇用する企業の方は自衛隊経験者のきちんとしたあいさつや言葉遣い、素直さや粘り強さといった点を評価しています」と岡田さん。自衛隊経験者は電話応対など今の若者が苦手にしているスキルも含め、社会人としての基本が身に付いているからこそ、即戦力になるという。

    画像: 陸上自衛隊久里浜駐屯地で行われた就職希望の自衛官を対象にした研修。自己分析や面接対策などを行っている

    陸上自衛隊久里浜駐屯地で行われた就職希望の自衛官を対象にした研修。自己分析や面接対策などを行っている

     だがその一方で課題と感じる点もあると話す。「就職希望の自衛官を対象にビジネスマナーなどの研修をしています。自衛官の方はこれまでは命令されたことを実行する、いわば受け身で仕事に臨んでいた傾向も見られます。ですが民間企業では主体的な行動が求められます。自衛官の皆さんは向上心と責任感がある。主体的に仕事に取り組むことでより活躍の機会が増え、その結果、さらに高い評価が得られると思います」。 

    【二見龍氏】
    1957年東京都生まれ。防衛大学校卒。陸上自衛隊で東部方面混成団長などを歴任、陸将補で退官。現在は一般企業で危機管理コンサルティングを行う傍ら執筆活動を続ける。近刊は『自衛隊式セルフコントロール』(講談社刊)

    【岡田真実氏】
    株式会社パソナ 自衛隊就職支援室 キャリア支援アドバイザー

    (MAMOR2021年10月号)

    <取材・文/MAMOR編集部>

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