新入隊員は入隊後の教育期間中に自衛官に求められる知識と技術の基礎と、時間厳守など集団生活の基本ルールを学ぶ。それを教える教育隊で、隊員はどのようにスキルを身に付けていくのか、基礎教育のシステムを紹介しよう。
新入隊員全てが経験する自衛隊の基本教育
自衛官候補生として入隊後、最初に配属されるのが教育隊だ。最初の3カ月間、隊舎で共同生活を送りながら自衛官としての基本を学ぶ。その基本は、身だしなみや掃除のやり方などの「生活面」、敬礼や行進、小銃の取り扱いなど自衛官として最低限身に付けなければならない「基本教練」、自衛隊法などの諸法規や防衛に関する教養を学ぶ「座学」と大きく3つに分かれ、同時に体育による「体力錬成」も行う。新隊員は訓練漬けの日々を過ごし、団体生活における行動の基礎や規律を学ぶのだ。
新隊員教育で特に厳しいのが生活面の指導だ。例えば掃除は居室はもちろん、トイレや教場、玄関など隊舎の隅々まで掃除する。最後は教官の点検を受け、ミスがあればやり直しをさせられることもある。隊員は基本的に基地・駐屯地内で集団生活を送るので、病気につながる環境衛生は感染症の予防としても重要なのだ。
元自衛官が語る、教育隊で教わったこと
「暗い中でもどこに何があるか分かるよう、整理整頓の徹底を教わりました」(小嶋桂司さん/飲食店店主)
「限られた時間で隅々まできれいにできるよう仲間と相談しチームワークで掃除を実施しました」(かざりさん/タレント)
教育を受ける中で育まれる行動や思考のスキル
自衛隊での行動の良し悪しは、作戦自体の成否に関わる。自分の身勝手な行動が生死に直結することもある。だからこそ、日常生活から集団行動に慣れることが大切になる。新隊員は集団生活を送る中で時間内に作業を終わらせるため、効率の良い方法を考えたり、不得意なことを手伝ってもらうなどお互いに助け合いながら、日常生活でも計画性を持って取り組むようになる。
例えば小銃を扱う訓練1つ取っても、教育の目的は小銃の持ち方など型を覚えることだ。だがその教育が、考える力や周りと動きを合わせるチームワークなど、スキルが磨かれるきっかけにもなっているのだ。
(MAMOR2021年10月号)
<取材・文/MAMOR編集部>