• 画像: 左から前川裕弘氏、らんまるぽむぽむタイプα、松井裕一朗氏

    左から前川裕弘氏、らんまるぽむぽむタイプα、松井裕一朗氏

     防衛省・自衛隊は2020年7月26日に、初となる「せり売り」(不用物品オークション)を実施した。練習艦の操だ輪、パイロットのヘルメット、輸送機の操縦かんなどが出品され、合計581万8000円の売却金額が集まり話題となった。

    「マモオク鑑定団」結成

     古くなって退役した装備品に高額の値段が付くとはマモル編集部もビックリ!そこで急きょ、前川裕弘氏、らんまるぽむぽむタイプα、松井裕一朗氏による「マモオク鑑定団」を結成。マモル編集部が独自に独自に選んだ物品を、専門家である鑑定団員なら、どんな評価をするのか鑑定してもらった。

    【前川裕弘氏】
    旧日本軍の実物軍装品店「神保町軍装店」の代表。映像作品の軍装考証を手掛けるほか、書籍の監修・執筆も行う

    【らんまるぽむぽむタイプα】
    ミリタリー、サバイバルの知識が豊富なタレント、防災士。著書に「彼氏にしたい陸自装備ベスト10」(竹書房)がある

    【松井裕一朗氏】
    英軍専門の軍用車コレクター。「ミリタリーアンティークス大阪」の館長。元航空自衛官で現在は航空予備自衛官

    鑑定品No.1:暗視装置(両眼式)

    もし使用可能な暗視装置なら、良い値段で取り引きされること間違いなし

    画像1: もし使用可能な暗視装置なら、良い値段で取り引きされること間違いなし

    【全幅:約20cm 奥行:約15cm 高さ:約10cm 重量:0.9kg】

     暗闇でも視界を確保できる、陸上自衛隊の暗視装置には単眼式と両眼式があり写真のものは両眼式の「微光暗視眼鏡JGVS-V3」。 単眼式はヘルメットの上に付けて使用するときだけ目に装着することができるが、両眼式は脱着するときにヘルメットも脱がなければならないので、常時装着して任務を行う。

    画像2: もし使用可能な暗視装置なら、良い値段で取り引きされること間違いなし

    らんまる:これはぜひ手に入れたい一品ですね。陸自の暗視装置はファンなら心踊るお宝です。

    松井:実際に暗視ゴーグルを装着してサバイバルゲームを楽しむというファンがけっこういます。彼らは他国の軍隊の暗視装置をネットなどで購入してるんですが、もし実用可能な陸自の暗視装置がオークションに出品されたら、良い値段で取り引きされることは間違いなしです。私は某国軍の暗視装置を装着したことがあるのですが、夜間戦闘では絶対勝てないと思うほど高性能でした。

    前川:昔から狙撃銃の照準装置と暗視装置は高い価格で取り引きされますね。その時々の最先端技術を使った装備ですから。もちろん、使える状態というのが条件の額です。

    <鑑定額はズバリ ¥600,000->

    鑑定品No.2:UH-1Hの計器一式

    アナログ式計器はファンには垂ぜんモノ。運用された経歴が分かるとなおよし

    画像: アナログ式計器はファンには垂ぜんモノ。運用された経歴が分かるとなおよし

     陸上自衛隊の多用途ヘリコプター。「ヒューイ」の愛称で親しまれ、1973年から133幾導入された。キャビン上部にエンジンを置いて機内空間を広くした構造で11人が搭乗でき偵察用オートバイも2台搭載できる。偵察や航空輸送を行う部隊で運用され 現在は改良型のUH-1Jが主流なヘリコプターだ。

    画像: UH-1H多用途ヘリコプター

    UH-1H多用途ヘリコプター

    らんまる:やっぱり、操縦かんや計器類がいちばんそそられますね。外国では、よく航空機などの計器を1つだけ外し、枠に入れて飾りや記念品にしているそうですよ。

    松井:機体の銘板が残っていれば○号機と書いてあるので、この機体の歴史を追えて価値が見い出せます。アナログ式の計器は古い機体の面影が残っていて、好きな人は欲しがるかも。

    前川:この鑑定額は、メーター類が全部そろっていて、機体番号が分かっていることが条件です。ボディーの一部だとかなり大きいけど、計器パネルなら普通のコレクターが室内で飾ることもできて価値がつきやすいですね。

    <鑑定額はズバリ ¥1,500,000->

    鑑定品No.3:艦艇の号鐘(ごうしょう)

    旧軍艦艇の号鐘は高額で取り引きされるので欲しがる人は多いのでは

    画像1: 旧軍艦艇の号鐘は高額で取り引きされるので欲しがる人は多いのでは

     艦艇に備え付けられた号鐘は、時刻を知らせたり緊急時に鳴らすものだ。「船鐘」ともいわれ、真ちゅうや青銅で作られている。船の交通規則である「海上衝突予防法」により、今でも濃霧などで視界が不良なときに鳴らすため、艦船への装備が義務となっている。

    画像2: 旧軍艦艇の号鐘は高額で取り引きされるので欲しがる人は多いのでは

    らんまる:桜といかりのマークが入っていますね!これが入っているのが海上自衛隊の物品という証拠で、重要な鑑定ポイントです。

    松井:イギリス海軍だと、艦長が引退するときに記念品として贈られることもあります。知人は時刻を知らせるとき、自宅で鳴らしているようです。近所迷惑になっていないといいのですが。

    前川:旧日本海軍でも佐官級以上の人が記念として個人で所有しているケースがありました。特にロンドン軍縮会議で廃艦になったような古い艦艇の号鐘は、けっこう高額な査定で取り引きされています。艦艇名が分かって、文字が残存していることが条件での鑑定額ですが、欲しいという人は多いですね。

    <鑑定額はズバリ ¥250,000->

    鑑定品No.4:航空自衛隊の航空服&耐G服

    航空ファンにはたまらない、憧れの物品。数少ないパイロット関連品はどれもプレミア

     航空機に搭乗する自衛官が着用する服装は、正式には「航空服装」といい、航空服、航空靴、航空手袋で構成される。このうち航空服(パイロットスーツ)は耐火性や防寒、防水に優れている。さらに戦闘機パイロットは急激な加速度(G)で意識を失わないように、耐G服という、下半身を空気圧で締め付ける服を着用している。

    画像: 航空ファンにはたまらない、憧れの物品。数少ないパイロット関連品はどれもプレミア

    らんまる部隊章のワッペンが付いていれば、なお良いですね。航空自衛隊のファンは撮影のための機材にお金をかけますから、もしこうしたスーツ一式手に入るとなると、とんでもない値段を付けるかもしれません。

    松井:全く出回らないので、もし出品されたらかなりの金額になるでしょうね。仮に、このスーツの持ち主が、ブルーインパルスの搭乗員だったという経緯があれば、さらに高額になる可能性があります。それほど航空ファンにとってブルーインパルスは憧れの存在といえます。

    前川:縛帯(落下傘バンド)がポイントです。これは評価が付きますよ。そもそもパイロット自体が少ないので、関連の物品となると、どれも希少なものになります。

    <鑑定額はズバリ ¥1,000,000->

    鑑定品No.5:艦艇の艦長席

    伝統的な「明灰白色塗装」と「艦長が使った」という実績がポイント

     艦長席は、艦の指揮を行う艦長用の座席。床に固定され、写真右下のハンドルを回すことで左右に回転する。階級によってカバーの色が異なり、艦長(2佐)が赤と青、艦長(1佐)や隊司令が赤一色、将官である群司令が黄色となっている。

    画像: 写真/近藤誠司

    写真/近藤誠司

    らんまる:いい座り心地で艦長の気分になれそうです。

    松井:最近艦艇が出てくるアニメがはやっていますから、艦長と分かるカバーがあってこその値付けになるでしょう。

    前川:このステップや台座の色は『明灰白色塗装』という伝統色で、旧海軍から今の海自まで艦内は全てこの色で塗装されていますよね。

    <鑑定額はズバリ ¥250,000->

    鑑定品No.6:陸上自衛隊の迷彩服

    大量に存在するため、希少価値はあまりない。特殊加工の差で類似品よりも高額に

    画像1: 大量に存在するため、希少価値はあまりない。特殊加工の差で類似品よりも高額に

     茂みなど草木があるフィールドで敵から隠れることを目的に作られた陸自の服。迷彩パターンは日本の気候土壌に対応したもの。隠れる際は 草木を身にまとい、フェイスペイントなどの偽装を施す。

    画像2: 大量に存在するため、希少価値はあまりない。特殊加工の差で類似品よりも高額に

    らんまる:自衛隊の迷彩服は、 赤外線で探知されにくい特殊な加工がされているんですよね。 それを考えると市場にあるレプリカよりは高くなります。

    松井:一般の人は、レプリカと本物の見分けがつかず、レプリカも大量にありますので、欲しい人は一部かも。

    前川:空てい部隊のものなら世界的に評価が高いので買いたい人もいるかもしれませんが、厳しいでしょうね。

    <鑑定額はズバリ ¥30,000->

    鑑定品No.7:ガスマスク(防護マスク4形)

    フィルターが軍事機密のため、もし出品されれば高額に。付属品があればさらにUP

     化学、生物、核兵器などの有毒な物質から身体を守るために装着する「防護マスク4形」。現在ではこの改良型が使用されている。陸自の隊員は「状況、ガス」の命令とともにこのマスクを短時間で装着する訓練を行なっている。

    画像: フィルターが軍事機密のため、もし出品されれば高額に。付属品があればさらにUP

    らんまる:アメリカ軍やイギリス軍のマスクは数万円で払い下げられています。ちなみに私のはセルビア軍のもの。

    松井:実はフィルターの構造は軍事機密。自衛隊のマスクは、まず世に出ないでしょうね。

    前川:ガスマスクはオークションなどでも世界的に高評価です。箱などの付属品付きなら、さらに5万円は値が上がります。

    <鑑定額はズバリ ¥130,000->

    (MAMOE2021年1月号)

    <文/古里学 撮影/田中秀典>

    マモオク鑑定団、参上!

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