自衛隊の行動に欠かせないものの1つが「インテリジェンス(情報)」だ。これは部隊が何らかの作戦行動を起こすのに先立ち、あらかじめ準備しておかねばならないもの。陸上自衛隊が収集する情報資料(インフォメーション)と、それを分析して得た情報(インテリジェンス)について、その収集方法を解説しよう。
対象地域で活動する人の観察や接触で得られる情報
人的情報(HUMAN INTELLIGENCEを略してHUMINT「ヒューミント」と呼ばれる)は人が直接観察、判断したり、人との接触で得られる情報全般を指す言葉だ。
ヒューミントは古くから使われ、身分を偽って、敵勢力もしくはそれに近い人物から情報を聞き取る、ということもヒューミントに含まれるが、実際には堂々と身分を明かして行うものも含め、広範な活動によって収集される。
例えば、任務を行う地域に赴いてどんな人物がその地域で行動しているかを観察して得た情報も人的情報。人の集まる飲食店などで話を聞いて現地の情報を仕入れる、ということも人的情報に該当する。
他国軍や現地の聞き取りなどで情報収集する
陸上自衛隊ではヒューミントを担当する部隊が存在する。この部隊は自衛隊の海外派遣などを契機に発足され、国際連合平和維持活動(PKO)などで自衛隊が海外に派遣される際、先遣隊として現地に赴き、情報収集を行う。彼らは現地で活動する国連機関やNGO、他国軍、さらには現地政府などの組織に所属する人や、現地住民に対する聞き取りなどを通じて人的情報を得るのだ。
また、防衛省から外務省に出向した自衛官である「防衛駐在官」が、各国の在外公館で情報の収集などを行っているが、彼らの収集する情報の一部も人的情報に当てはまる。
集めた生の情報を海外活動などに使う
人的情報も、各人が収集した後、集約して整理する。特に他人から聞き取った情報は、聞いた相手の先入観や特定の意図によってバイアスが掛けられていたり、うそや誤認情報が交じっていたりすることもある。分析にあたっては十分に注意しつつ、複数の情報源を確認するなどして精度を高める必要がある。
特に海外の現地で集めた人的情報は、遠く日本からでは分からない「生」の情報として貴重だ。収集・分析された人的情報は、それぞれの現地で活動する部隊の作戦遂行や、安全確保のためなどに使われる。
(MAMOR2021年6月号)
<文/臼井総理 写真/防衛省提供>