•  自衛隊の行動に欠かせないものの1つが「インテリジェンス(情報)」だ。これは部隊が何らかの作戦行動を起こすのに先立ち、あらかじめ準備しておかねばならないもの。陸上自衛隊が収集する情報資料(インフォメーション)と、それを分析して得た情報(インテリジェンス)について、その収集方法を解説しよう。

    通信やレーダー、電磁波などの情報

    画像: 計測によって集めた情報を分析する隊員。得られた情報を効果的に運用するための訓練なども行い、精度を高めていく

    計測によって集めた情報を分析する隊員。得られた情報を効果的に運用するための訓練なども行い、精度を高めていく

     信号情報(SIGNAL INTELLIGENCEの略でSIGINT「シギント」と呼ばれる)は、通信情報と電子情報の総称だ。通信情報は敵などの通信活動を主な資料源として収集し、電子情報は敵などが発射するレーダーなどの電磁波を傍受して得られる情報を指す。

     軍隊が活動するにあたっては、何らかの電磁波が放出される。隊員同士の連絡には無線通信が用いられ、移動目標を探知するにはレーダーを使う。過去の戦争の例を見ても、攻撃前には飛び交う電波の量が増えることが多く、信号情報(電波情報)は、敵の情勢を探るために非常に重要だ。

    各種レーダーやアンテナなどで傍受

    衛星可搬局は車両に搭載され、収集装置と共に行動する。収集装置が集めた通信情報は、パラボラアンテナで通信衛星を経由して通信所や本部に送信される

     信号情報の収集には「アンテナ」が重要だ。各種アンテナで目には見えない電磁波をキャッチ。それを解析、暗号解読し、どんな通信が敵方で行われているか分析する。

     無線通信からは、傍受や暗号解読だけではなく、通信頻度や量などを解析することでも情報が得られる。通信内容がはっきり解読できなくても、例えば、通常より通信量が激増しているのであれば、先方に何か異常事態が起きたと類推することが可能だ。

     電子情報も、敵が発した電磁波を捉えて取得する。敵方のレーダーによる電波を捉えることで防空能力なども分かるとされ、日本に接近する不審な航空機には、電子情報を取得する目的でやってくるものもあるという。

    他国の動向監視や敵の動向察知に使用

    画像: 通信情報の傍受などを行う収集装置は、船舶などの通信を傍受する。集めた情報は、パラボラアンテナを搭載した衛星可搬局を経由して送信される

    通信情報の傍受などを行う収集装置は、船舶などの通信を傍受する。集めた情報は、パラボラアンテナを搭載した衛星可搬局を経由して送信される

     信号情報は広範囲に活用される。取得・分析した他国の動向などは、広く国防方針の策定のために用いられるほか、自衛隊各部隊が日本の領土・領海・領空を守るために役立てられる。

     平時から、日本の領空・領海周辺を航行・飛行する船舶、航空機の動向を監視するとともに、有事が想定される緊迫した事態の下では、敵が侵攻してくる動きをいち早く察知するために信号情報が使われるのだ。

    (MAMOR2021年6月号)

    <文/臼井総理 写真/防衛省提供>

    隠密に情報を集め分析する技術

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