•  陸上自衛隊に新たに導入された無人機スキャンイーグル2とはどのような装備なのか。飛行訓練で分かった高い実力を紹介しよう。

    スキャンイーグル2とはどんな無人偵察機?

    画像: スキャンイーグル2とはどんな無人偵察機?

    【スキャンイーグル2】
    <SPEC>全長:1.7m/全幅:3.1m/全備重量:26.5kg/動作環境:-16℃〜+50℃

    飛行訓練に密着。発進から機体回収まで

    画像: 発進前、整備担当隊員と操縦担当隊員らによるブリーフィング。天候や訓練内容などの確認を行う

    発進前、整備担当隊員と操縦担当隊員らによるブリーフィング。天候や訓練内容などの確認を行う

     2019年にサウジアラビアの石油施設がドローンで攻撃されるなど、近年は無人機・ドローンの軍事利用が増えている。これを背景に、13年より陸上自衛隊で試験導入していたのが無人偵察機「スキャンイーグル2」だ。

     マモルは、山梨県の陸上自衛隊北富士演習場にて行われた、同機の飛行訓練を取材することができた。当日はあいにくの天候だったが、わずかに回復した間隙をついて訓練は行われた。

     機体は、隊員が1人で十分運べる大きさ。とはいえ高性能で繊細なカメラやセンサー、電子機器が搭載されているので、運搬時には細心の注意を払う。

    「スキャンイーグル2は発進前の段取りが9割と言えるくらい準備が重要です」と操縦士の藤井貴雄2等陸曹。

    画像: 発進は、専用の空気圧式カタパルトによって行われる。風向きによって無人機を発進させる方向を変える

    発進は、専用の空気圧式カタパルトによって行われる。風向きによって無人機を発進させる方向を変える

     機体を空気圧式のカタパルト(発射装置)に設置し、機体に搭載されたエンジンを駆動してプロペラを回す。風向きや雲の様子を見ながらタイミングを待ち、いよいよ発進。エンジン音が高まった後、カタパルトから押し出される空気音とともに、機体は雲の間へと消えていった。

     機体の発進を指揮する藤井暢明陸曹長は「周囲の安全確保、風向きなどを見て適切なタイミングで発進させます」と語る。

    画像: 飛行訓練に密着。発進から機体回収まで

     機体の回収は「スカイフック」と呼ばれるロープを張った装置に、機体翼端のフックを引っ掛ける。翼端板は力が掛かると外れて破損を防ぐ構造だ。

    画像: 回収したスキャンイーグル2の機体を運ぶ隊員。破損の可能性もあるので、慎重に運ぶ

    回収したスキャンイーグル2の機体を運ぶ隊員。破損の可能性もあるので、慎重に運ぶ

    手動操縦も可能。スキャンイーグル2の実力は

    画像: モニターで確認しながら、スキャンイーグル2の操縦を訓練する隊員。画面に表示される各種情報や、カメラから転送される映像を見ながら操縦する

    モニターで確認しながら、スキャンイーグル2の操縦を訓練する隊員。画面に表示される各種情報や、カメラから転送される映像を見ながら操縦する

     スキャンイーグル2は、事前にプログラムした経路の飛行はもちろん、状況に応じて新たな経路を作成し、飛行させることもできる。

     指揮所に設置された遠隔装置の画面には、機体に搭載されているカメラの映像やデータが表示されていた。一見するとパソコンにジョイスティックが付いたようなもので、まるでフライトシミュレーターをやっているようなイメージだった。

     同機は機体に搭載されているカメラや赤外線センサーが非常に高性能で、鮮明な映像で車両などの識別も容易だという。

     それに加え、静粛性にも優れている。静かな演習場の中だからある程度聞こえたものの、日常生活レベルの騒音があれば、なかなか気付けないだろう。今後は情報科部隊にスキャンイーグル2の配備が進められるとのことで、陸上自衛隊の情報収集能力向上に期待がかかる。

    (MAMOR2021年6月号)

    <文/臼井総理 写真/村上淳>

    隠密に情報を集め分析する技術

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