陸上自衛隊では、日ごろの訓練の熟練度を測るため、敵、味方に分かれての模擬戦を行い、戦地における行動、判断、 作戦能力などを審判が判定する「訓練検閲」という“実地試験”がある。
2025年9月には、東富士演習場で、第14普通科連隊(14普連)と 第35普通科連隊(35普連)が、攻撃側と防御側に分かれて7日間戦う「第10師団訓練検閲」が行われた。
各連隊が陣地を形成し終え、本格的な戦闘がスタートした4日目の様子をレポートする。
DAY 4【戦闘開始】敵の航空機や戦闘車両による攻撃に応戦

14普連の前線部隊が35普連の前線部隊に近づき、攻撃を始めた(図中の番号は写真番号)
訓練検閲が開始し、1~3日目の35普連はひたすら穴を掘る、カムフラージュするなどして敵から発見されにくい陣地を形成する。
4日目以降になると、35普連が陣地の構築を終えるのと前後して、攻撃側、14普連側の動きが活発になる。

①敵のヘリコプターを近SAMで攻撃:敵の戦闘ヘリコプターが接近しているとの情報を受けて、対空戦闘を行うために射撃位置まで移動してきた近SAM
14普連が突破を目指す35普連の前線を弱体化して戦闘を有利に進めるため、偵察部隊の情報を基に、14普連を援護する戦闘機やヘリコプター(注1)、戦闘車両などが35普連の各陣地に攻撃し始めたのだ。
隊員は敵の航空機を発見し、射撃を行った
これに対し、35普連は、10高射大隊が短SAMと近SAMで敵の航空機を、10偵戦が16式機動戦闘車で敵の戦闘車両を迎撃。

②近SAMを指揮する10高射の中隊本部:近SAMの射手へ射撃を指示する10高射の近SAM中隊本部。大型トラックの荷台に本部が作られており、敵の航空機の居場所などの情報を処理している。ここから数キロメートル離れた3基の近SAMの射手へ航空機の場所を知らせたり、作戦を伝えている
射撃を行った車両は、発射時のせん光や音、弾道から居場所を敵に割り出されるため、陣地を移動しながらの応戦となった。
(注1)実際に戦闘機やヘリコプターが飛んできたのではなく、飛んできたという想定を、検閲を実施する統裁部が付与し、その状況の下、14普連と35普連は戦闘を行っている
防御側は迎撃態勢を整えることが大事

③警戒監視を24時間態勢で実施:陣地の近くにある、身を隠して敵に侵入されやすい森林内で、警戒監視を行う35普連の隊員
14普連ではこれと並行して、側背攻撃(注2)や奇襲攻撃などを任務とする遊撃部隊が進撃を開始。

④10高射の本部に各種の情報を集約:10高射中隊の本部内には、近SAMの位置や敵航空機などの情報を表示するPC、無線機などが設置されている
警戒監視を行う中でこの動きを捕捉した35普連の各陣地付近で、戦闘状態に突入した。

⑤野外炊具1号で戦闘糧食を加熱:分離して使用できる野外炊具1号で戦闘糧食を加熱する炊事班の隊員
隊員同士が相対する戦闘では、えん体に身を隠して攻撃ができる陣地を構築し、迎撃態勢を整備した防御側が有利となる。

⑥温かい食事が英気を養う:この日の夕食は、豆入り米飯、もち麦入り米飯、ロールキャベツのカレー煮、トマトクリームマカロニ、ドライフルーツだ
35普連は圧倒的な火力のある機関銃や、16式機動戦闘車による援護もあり、14普連の遊撃部隊の撃破に成功した。

⑦16式機動戦闘車が敵の部隊を警戒監視:敵の偵察部隊の位置情報を捉えた本部の指示に従い、警戒監視するため、適所に配置された16式機動戦闘車
こうして、敵の攻撃によって近SAMなどの装備品の損害や人的被害が出たものの、35普連の前線の陣地が壊滅的な状況となるのは避けられた。
(注2)敵の側面や背後に回って攻撃すること
(MAMOR2026年2月号)
<文/魚本拓 写真/村上淳 写真提供/防衛省>
※記事内容は上記掲載号の発売時点のものです

