•  わが国は6852の島々で構成されており、本州、北海道、四国、九州、沖縄本島を除く6847が離島で、うち自衛隊の基地、駐屯地は17の島にしかない。もし、この無防備な離島を敵対する勢力に占領されたら、どのようにして奪回するのか? 

     2018年に、陸上自衛隊に新編された島しょ部防衛のエキスパート部隊「水陸機動団」の動きを中心に、具体的な作戦の一例を紹介しよう。

    出動前 ー緊張感が張り詰める艦内ー

    画像1: 出動前 ー緊張感が張り詰める艦内ー
    画像2: 出動前 ー緊張感が張り詰める艦内ー

     出動前の緊張感が張り詰める艦内で、顔にカモフラージュ用のドーランを塗ったり、装備品を怠りなく点検する隊員たち。1両のAAV7に21人の上陸要員が乗り込む。

     水陸機動団の隊員は、通常の火器以外に救命胴衣や酸素ボンベなど、水上で起きるどのような事態にも対処できるよう、さまざまな装備を携行する。その1つひとつが自らを守り、任務完遂に欠かせないため、準備は念入りに行われる。

    画像3: 出動前 ー緊張感が張り詰める艦内ー

     占拠された島しょを目指して航行する輸送艦『くにさき』。その艦内にある車両甲板では、多くの整備員により水陸機動団の主力装備である水陸両用車「AAV7」の出撃の準備が整えられていた。

     上陸目標地点の沖合に到達次第、「ウェルドック」と呼ばれる艦尾の扉が開き、そこからAAV7やエアクッション艇(LCAC)が海上へと出撃する。

    画像4: 出動前 ー緊張感が張り詰める艦内ー

    『くにさき』甲板上には大型トラックが係留されていた。大型輸送艦には、艦上甲板だけで大型トラックを30台以上収容することができる。

    画像5: 出動前 ー緊張感が張り詰める艦内ー

     また艦尾のヘリコプター甲板では大型輸送ヘリCH-47JAも待機。ここから発進したヘリに乗った隊員たちは、ヘリにより目的地へ機動したり、洋上でヘリより降下し、遊泳やボートで目標地点へ上陸する「空中機動作戦」を担う。

    画像6: 出動前 ー緊張感が張り詰める艦内ー

     上陸目標地点まであと数キロメートルと迫った洋上、ついに艦尾にあるウェルドックのハッチが開き始めた。喫水線上にあるドックの内部に徐々に海水が入ってくる。

     このウェルドックを設置することで、海上自衛隊の輸送艦は強力な輸送の能力を持つことになった。それとともに水陸両用車であるAAV7は、その持てる能力をいかんなく発揮することができるのだ。

    出撃 ー目標の上陸地点へ向かうー

    画像1: 出撃 ー目標の上陸地点へ向かうー

     次々と洋上へと出撃するAAV7。車体後部にある2つの吐出口からウオータージェットが勢いよく噴出する。これによって生まれた推進力で、AAV7は約24トンの重量でありながら時速約13キロメートルで航行することができ、そのまま海から上陸し、走行して上陸要員の輸送および搭載火器による支援を行う。

    画像2: 出撃 ー目標の上陸地点へ向かうー

     荒波をかき分け、目標の上陸地点へと向かうAAV7。その航行距離は数十キロメートルを誇る。水上での安定性、気密性に優れているAAV7だが、敵からの攻撃など万一のときに備え、水没したときも冷静に対処できるよう、乗員や上陸要員は普段から着衣のまま遊泳して目標地点に上陸するなど、過酷な訓練を繰り返している。

    画像3: 出撃 ー目標の上陸地点へ向かうー

     人員輸送型のAAV7の後に続く回収型のAAV7。主力火器を設置した銃塔のかわりにクレーンやウインチを装備しており、故障や攻撃などで破損したAAV7を回収・整備する。AAV7にはこのほかにも別バージョンとして指揮・通信能力に特化した指揮通信型AAV7がある。

    画像4: 出撃 ー目標の上陸地点へ向かうー

     輸送艦の艦上から作戦の模様をじっと見守る、右より水陸機動団長の青木伸一陸将補(取材時)、掃海隊群司令の白根勉海将補、航空総隊幕僚長の柿原国治空将補の3人。

     洋上から陸上へと進出して占領地を奪還する水陸両用作戦は、3自衛隊の統合運用を前提に行われる。強固な協力体制を抜きにして任務の成功はあり得ない。

    上陸 ー協力ありきの水陸両用作戦ー

    画像1: 上陸 ー協力ありきの水陸両用作戦ー

     ついにAAV7が海から陸上へと姿を現した。履帯で悪路の砂浜を一気に駆け上がり、目標地点へ進み、後部のハッチから乗り込んでいた隊員たちが跳び出す。

     しかしAAV7の任務はこれで終わりではない。搭載火器をもって隊員を支援する。輸送から戦闘へ、その素早い切り替えが可能なのもAAV7ならではの特徴だ。

    画像2: 上陸 ー協力ありきの水陸両用作戦ー

     AAV7、ボートで上陸した隊員に引き続いて、輸送艦から発進したLCACが上陸地点へと車両や人員を運ぶ。LCACは輸送艦に2基配備されている。

    画像3: 上陸 ー協力ありきの水陸両用作戦ー

     水陸機動団の目的は占領地への上陸。そのためには海だけでなく、ヘリコプターから上陸要員が水上に降下するヘリキャスティングなどさまざまな手段で目標地点を目指す。

    画像4: 上陸 ー協力ありきの水陸両用作戦ー
    画像5: 上陸 ー協力ありきの水陸両用作戦ー

     上陸した隊員たちは散開し、AAV7の火力支援の下、障害物を排除して目標地点を次々と制圧する。

     部隊章にあしらわれた金鵄(日本の建国説話に登場する金色のトビ)に草薙の剣、圧倒的な強さと強力な意志を表したこれらに象徴される精強部隊・水陸機動団は、任務を全うするために日々の訓練を怠らない。

    <文/古里学 写真/江西伸之、防衛省>

    (MAMOR2020年4月号)

    水を馴らし陸を駆ける最強の機動部隊

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