•  自衛隊に採用された後、自衛官となるために必要な教育訓練を受ける者を「自衛官候補生」という。陸上自衛隊の教育隊で「自衛官候補生」(以下、候補生)は、約3カ月の教育期間にどのような訓練を受けるのか。これまでお伝えしてきた「採用試験」「入隊式」「基本教練」から「座学」まで
    )の流れに続き、今回は「救命訓練」から「修了式」までの流れを時系列に沿って紹介する。

    5月10日 救命訓練:命を救うために必要な技術を習得

    画像: 負傷者役と搬送役を入れ替えながら患者搬送の訓練をする。低姿勢での搬送は意外と体力が求められることに気付く

    負傷者役と搬送役を入れ替えながら患者搬送の訓練をする。低姿勢での搬送は意外と体力が求められることに気付く

     有事などの際に負傷した隊員を助けるため、止血法、心肺蘇生法、患者搬送といった救命技術を教える。患者搬送は1人で運ぶ場合、2人で運ぶ場合など複数の方法を学び柔軟に対応できるようにする。

    5月20日 偽装訓練:「見つからない」ため必要な技術を学ぶ

    画像: 草の中に身を隠しても、音で気付かれることがある。何度も見つかり、失敗しながら候補生は多くの技術を学習する

    草の中に身を隠しても、音で気付かれることがある。何度も見つかり、失敗しながら候補生は多くの技術を学習する

     偽装とは敵に見つからないようにするため、草を身に着けたり、顔に濃い緑色などのドーランを塗って身を隠す技術。隠れる側、見つける側と立場を変えながら効果的に身を隠す技術を学ぶ。

    5月25日 射撃訓練:命に関わるゆえ、安全管理も学ぶ

    画像: 射撃の姿勢、小銃の構え方など、動作の1つひとつを教官から教わり、正しい撃ち方を覚える

    射撃の姿勢、小銃の構え方など、動作の1つひとつを教官から教わり、正しい撃ち方を覚える

     小銃での射撃訓練は安全管理のため“銃口の向きを管理すること”を徹底して教わり、その後、姿勢の取り方や構え方を学ぶ。初めは弾を入れずに動作を学び、最後は空包と実弾で訓練を行う。

     実際に射撃を行う際は、射撃場の禁止事項、入場から射撃開始、終了から退場までの一連の行動を教え込まれる。ひとつ間違うと人命に関わるため、危機意識を高めたうえで射撃訓練は行われる。

    6月2日 行進訓練:フル装備で長距離を歩く体力勝負の訓練

    画像: 体力が消耗されるなか、疲労が蓄積した隊員の荷物は、同じ班の仲間が代わりに持つなど、チームワークも求められる行進訓練

    体力が消耗されるなか、疲労が蓄積した隊員の荷物は、同じ班の仲間が代わりに持つなど、チームワークも求められる行進訓練

     テッパチをかぶって小銃を持ち、背のう(隊員が使用するリュック)に水や食料など約30キログラムの荷物を入れ、約25キロメートル隊列を組んで行進。周囲の安全を確認してひたすら歩き続ける。

    6月15日 総合訓練:教育訓練の成果を試す全ての要素が入った訓練

    画像: 最終地点に到達し、敵の隙を狙いながら突撃開始。訓練の成果が試される緊張の瞬間だ

    最終地点に到達し、敵の隙を狙いながら突撃開始。訓練の成果が試される緊張の瞬間だ

     入隊してから約2カ月半。訓練の総仕上げとして、候補生はこれまでやってきた射撃や偽装など、さまざまな訓練の要素が入った総合訓練を行う。

     シチュエーションはさまざまだが、敵部隊の行動を偵察し、作戦に基づき、目標を奪取する。判定役の教官からの指導もなく、候補生同士で作戦計画を立てるため、自身と仲間の連携も試される。

    画像: 訓練を前に念入りに顔にドーランを塗る候補生。周囲の環境に合わせた偽装を自身に施す。練習を繰り返し、スムーズにできるようになる

    訓練を前に念入りに顔にドーランを塗る候補生。周囲の環境に合わせた偽装を自身に施す。練習を繰り返し、スムーズにできるようになる

    画像: 周囲の動きを確認しながら低い姿勢を保ち、ほふく前進で敵の陣地に接近。集中力を切らさぬよう、慎重に動く

    周囲の動きを確認しながら低い姿勢を保ち、ほふく前進で敵の陣地に接近。集中力を切らさぬよう、慎重に動く

    6月25日 修了式:長くて厳しい候補生教育が修了

    画像: 修了式では、訓練成績や生活態度などが優秀な隊員の表彰も行われる。ここでの経験が今後の自衛官生活の自信になる

    修了式では、訓練成績や生活態度などが優秀な隊員の表彰も行われる。ここでの経験が今後の自衛官生活の自信になる

     約3カ月の自衛官候補生教育課程が修了し、候補生は修了式を迎える。修了式を経て階級が付与され、2等陸士として歩き出す候補生たち。彼らは呼称から「候補生」が取れて「陸上自衛官」になり、次の新隊員特技課程に赴く。

    修了式で行われる「告達」とは?

     上位者から下位者へ告げ知らせること。候補生の修了式では、教官から候補生に次の教育先である部隊と任地が告げられ、候補生は力強くそれに答える

    (注)日付は時間の流れを示す仮の日付で、写真はイメージとして2020 、21 、22年各4月に入隊した隊員の教育訓練の写真を使用

    (MAMOR2022年10月号)

    <文/臼井総理 撮影/村上淳>

    これが新入り陸上自衛官のリアル・ドラマだ!

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